防空壕跡で会議をした猫たちの失踪
どんな伝承か
昭和六十二年七月、長野県埴科郡坂城町でのこと。裏山の崖にあった横穴式の防空壕の跡に猫が集まるといい、子どもたちの間で話題になっていた。ある日、五年生の孫が息を切らせて「また猫が会議をしている、Tさんの猫二匹もいる」と知らせてきたので行ってみると、十数匹の猫が輪になって座り、声も出さず顔を見合わせていた。数日後、Tさん宅の猫二匹が姿を消したと孫が知らせてきた。それを聞いた語り手は、あの日の集まりはこのことを相談していたのではないかと思い当たった。Tさん宅では家族の折り合いが悪く、家の中に何か悪い気配が漂っていたといい、猫はそれを嫌ったのだろうかとも語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。