火葬場の大木が煙なく燃えた夜
どんな伝承か
徳島県三好郡池田町の古泉重夫が自ら体験した話。戦時中の一七、八年頃、今の三好病院の東に自分の家があった。夜なか頃に帰ってくると、その上手に火葬場があって大きな木が生えていた。そこまで来ると急に目の前が赤くなり、ひょっと見ると大木が燃え、バリバリと音を立てている。電信柱にもたれて三〇分ほど見ていたが、それだけ燃えているのに不思議と煙が出ない。しばらくすると火はぐるぐる三回まわってぱっと消えた。家に帰って父に「今晩、焼き場でだいぶ焼いたかね」と聞くと「知らん」と言い、火事なら半鐘も鳴るはずだと取り合わない。翌朝早くに見に行くと火事の跡は全くなかった。父は狸に化かされたのだと片づけたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。