奥入瀬の流れから覗く川坊主
どんな伝承か
昭和五二年七月、山岳写真家でもある和田陽太郎が、初夏の奥入瀬渓流を歩き、石ヶ戸付近の渓流美をカラーで撮影した。出来上がった写真の中に、ほとばしる流れからにゅうっと黒い顔が横向きに写っているのが見つかった。頭は禿げ、目には大きな目玉が光っており、鼻の穴とあごには髭が生えている。伝説によれば、その昔、鬼神のお松が旅人を殺して食べたと言われる場所だけに、当時の川怨霊が今なお生き続けているのだろうか、川坊主と名づけてよい亡霊かもしれないという。
原典より
出典・大高興著『お化けと幽霊』(北の街社)。—— 現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。