夢に帰ってきた出征中の弟
どんな伝承か
昭和十九年夏のこと。戦争で弟が北支へ行き、家を焼かれた家族は世田谷に引っ越していた。八月のある日、踏み石をカタカタ踏んで弟が帰ってきて、玄関の戸を苦しそうにガタガタ開けている夢を見た。「どうしてここが分かったの」と聞いて目が覚めた。翌昭和二十一年八月、弟は足に銃弾が貫通したまま帰還した。その弾を受けたのが、ちょうど夢を見た頃だったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。