鷹狩の将軍が惚れた秋刀魚の匂い
どんな伝承か
昔、徳川将軍が目黒の里へ鷹狩に来た折、農家の縁先で休んで渋茶を飲んでいると、勝手の方からよい匂いがしてきた。近侍に尋ねると、それは秋刀魚を焼く匂いで、下賤の者が食う魚だと答えた。だが将軍はあまりによい匂いなので食べたくなり、百姓から貰って食べたところ大変うまかった。城中に帰ってもその味が忘れられず、「目黒の秋刀魚」と度々口にしたという。目黒で秋刀魚が獲れたわけではないが、それが今に伝わった有名な笑話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
城西風土記と昔語り(熊沢宗一・1959年(昭和34年))
『城西風土記と昔語り』は、東京中野の江古田に住んだ熊沢宗一が昭和三十四年に著し、自ら発行した郷土誌である。中野長者と淀橋の伝説、御犬小屋や桃園の旧跡、新井薬師、江古田の獅子舞、内藤新宿や高田馬場の昔語りなど、中野と近在の伝説・旧跡・寺社を、古文書や碑文、琵琶歌も交えて記す。全二十章の後半には著者の百姓時代や終戦直後の食糧事情、台風の被害、日露戦争の軍隊日誌を収め、巻末に著者略歴を付す。