海の霊肉を食べた高橋長者の娘
どんな伝承か
大飯郡加斗村東勢には高橋権太夫という人がおり、その娘がのちの八百比丘尼だという。権太夫は外国との交易で財をなし、八つの蔵に金銀財宝があふれ、高橋長者の名は異国にまで聞こえていた。海の向こうに憧れた長者はただ一人舟をこいで沖へ出、三日三晩ののちある島に着いて手厚くもてなされたが、浦島子と同じように本土の家へ帰ってきた。そのときもらってきた海の霊肉を娘が食べたのである。空印寺の縁起も、比丘尼を白雉五年生まれの高橋長者の姫とし、十六歳で人魚の肉を食べ、八百歳で寺の後瀬山麓の岩屋に入定したと記す。
原典より
そのときもらって来た海の靈肉を、彼の一女が食ふのである。—— 福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年))
『福井縣鄕土誌 民間傳承篇』は、福井市立実科高等女学校の郷土誌第二輯として教諭中塩清之助が編み、昭和十四年二月付の学校長金岡正孝の序を巻頭に置く。丹生郡の名、哭女、越前萬歳、仏の舞、幸若舞、猫塚、隠れ里、子育て幽霊、愛発の関、弁慶譚、八百比丘尼、水の神女譚を、古文献や他地方の類例と照らして論じる。生徒が集めた県下の昔話は類話をA・Bなどに分けて並べて解説を付し、校正者大村四朗の跋を添える。