都鳥に問うた業平の渡し
どんな伝承か
東国へ下った在原業平は、武蔵と下総を分ける大河のほとりに立ち、はるばる来たものだと心細く思った。渡し守に急かされて舟に乗ると、供の者はみな都を恋しがる。折しも水の上に、嘴と脚の赤い、鴫より大きな白い鳥が遊んでいた。都では見かけない鳥なので名を尋ねると、渡し守はこれこそ都鳥だと答える。そこで業平が、その名を負うならば尋ねよう、わが思う人は無事かと詠むと、舟の者はみな涙にくれたと『伊勢物語』は記す。この川は上流を荒川、次を浅草川と呼び、千住から浅草の間がおもに隅田川と呼ばれていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸動物民話物語(窪田明治)
『江戸動物民話物語』は、「郷土史・東京」の刊行会を主宰した窪田明治が、東京の郷土史を調べた材料から江戸の民話を選んでまとめた本である。狐や狸、猫、蛇が人を化かし、恩を返し、祟る話を中心に、本郷・王子・向島・麻布・三田など東京各地に伝わる話を収める。狐・狸・猫・蛇・不思議な生き物の五部に分け、一話ごとに舞台となった土地の史跡や寺社の由来、沿革の解説を添え、まえがきとあとがきを付す。