六本立ちの残し木と肋骨三本の重傷
どんな伝承か
昭和三八年八月二九日のこと。岐阜県吉城郡の小打江山で、山の持ち主である古川町の小又氏と仕事仲間の原田みさ子とともに、杉の植林地の下刈りをしていた。その山には一株から六本の幹を出している残し木があり、小又氏はこの木のおかげで植林地が陰になるから伐ってくれという。語り手は残し木で山の神様の宿る木だと気がすすまなかったが、仕方なく伐ることにした。幹を三度斧の背で叩き、地上二メートルほどに昇って一本ずつ倒したが、みな傍の朴の木にひっかかった。弓なりになった朴の木を細心の注意で切っていた時、気がつくと木に飛ばされ、肋骨三本を折る重傷を負っていた。すぐそばの二人はその音も知らなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。