狐が一晩鳴いた翌日の大水と榎
どんな伝承か
木次の土手は水害から町を守る堤防であり、同時に大切な道でもあった。その土手には守り神として荒神の祠が据えられ、傍らに榎が植えられていた。かつては馬車や荷車と人が通るだけの道である。ある年の夜、この榎のあたりで狐の鳴く声が一晩じゅう続いた。翌朝から土砂降りの大雨となり川は氾濫したが、人の被害も堤防の崩れも出なかった。のちに道路を広げる話が持ち上がり、榎を伐るか、せめて枝だけでもという案が出たものの、誰ひとり手をかけようとせず、道は反対側へ広げられた。昭和の話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。