入営に植えた柳を枯らした父
どんな伝承か
昭和の話である。兵隊に行った息子が国のために軍務にはげみ、戦死するようにと祈り、無事に帰るようにはあまり願わないようであった。入営するときには親が必ず柳を植えるのが、当地方の習慣であった。昭和一五年に入営して大陸へ渡るとき、庭に柳を植えたが、病気のために内地へ帰され、あまり役に立たず現役免除で帰った。その後、柳は意気天を突く勢いで栄えたが、いつの間にか姿を消した。おそらく名誉の戦死をしなかったのを恥じて、父が枯死させたのだろう。当時の入営者は戦死を願い、生きて帰るとは夢にも思わなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。