雪の中で倒れたケヤキと戦死公報
どんな伝承か
昭和一四、五年、太平洋戦争に突入する前夜の頃であったろうか。新潟県東頸城郡松代村千年に「佐治浜ェサ」という中位の豊かな地主の家があった。その家の前は崖になっていて、そこに一本のそう大きくもないケヤキの木が生えていた。それが雪の中で突然倒れてしまった。家の人は驚き、倒れるような条件のない木が転んだというので怪しんでいたところ、間もなく次男の戦死公報が入ったということである。この次男はかなりの腕白坊主で、しょっちゅうこのケヤキによじ登って遊んで育ったという。あの腕白坊主の霊が帰ってきて腕だめしに木を転ばせたのではないか、と噂があったものである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考・昭和〜平成)