暮坂峠の見返りの松と出征の見送り
どんな伝承か
六合村には昔からの言い伝えが残っている。いつの頃か戦に出かけた若者たちのうち、大晦日に帰ってきた者は正月用の門松を立てることができ、その人たちを「暮れの山本」という。年末に帰れなかった者は門松の代わりに、村の境にある暮坂峠へ一本の松を植えた。その人たちを「明けの山本」という。六合村には山本という家が多く、今も明けと暮れに分かれている。日清・日露の戦争のときも、第二次世界大戦のときも、村人は昔の言い伝えを生かし、松の生える暮坂峠まで出征兵士を見送った。必ず村に帰ってくると信じてのことで、出征兵士はこの峠の松を「見返りの松」と心の中で呼んでいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。