三人の出征に植えた三本の松
どんな伝承か
千葉県市原市の話。語り手の祖母には四人の息子がおり、そのうち三人が出征した。三人が発つ前、庭には松が三本植えられ、揃って無事に帰るようにと祈られたという。敗戦の後、最初に戻ってきたのは長男で、中国やインドシナの激戦を経ての帰国だった。伯父は家のまわりを何度も回るばかりでなかなか玄関に入れず、ようやく意を決して戸を開けると、出てきた祖母が「ツトム!あー」と言ったきり絶句した。伯父は片足を引きずる身になっていたのである。長男と次男は帰ったが、三男は中国で戦死した。庭の松も一本は植えて間もなく枯れ、いまは二本しか残っていない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。