下駄になる前の桐丸太に宿る精
どんな伝承か
昭和一〇〜一三年頃の話。語り手の生家は浅草・向柳原(現在の浅草橋五丁目)で、桐材下駄甲良問屋を営んでいた。桐のカワ付き丸太が荷馬車で運ばれてきて、裏の倉庫にごろごろしていた。会津や茨城の岩間方面の荷主から送られてくる丸太は、少し湿って苔の匂いもした。語り手がその上によじのぼって平均台ごっこなどをして遊ぶと、父や祖父からいつも「バチがあたるゾ」と叱られた。カワ付き丸太は、下駄になる前は桐の精が生きているというのである。家で働く小僧たちは丸太の上に上って映画のまねをして歌っていたが、その子たちはだれも兵隊に行って戻らなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。