幹に押し出された石碑と黒沢家の榧
どんな伝承か
語り手の宅地内に、径一メートル余りの榧の大木があり、その根元に七〇〇年前といわれる阿弥陀如来の石碑が三基祀られている。これは黒沢家の氏神で、毎年八月八日を祭日としてきた。祖父母は「此の神様は、子供と遊ぶのが好きで、子供の集ることを喜んで居る」と語り、榧の下はいつも子どもらで賑やかだった。長男が五才の頃、榧の木の下で悲鳴がするので駆けつけると、幹に凭れていた碑の半分が長男を押し倒し、足の上に乗っていた。台石が高く支えていたので怪我はなかった。碑が落ちたのは、永年のあいだ幹が太り続けて碑を押し出していたためだった。十年ほど前には落雷に遭い半分が枯れかけたが、今は根本から新枝を出している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考・昭和〜平成)