蓋をしたまま流されたまむしの祟り
どんな伝承か
娘の頃のおイトさんは異常なほど蛇を嫌い、見ると熱を出して寝込むこともあった。ところが胃を患った父親はまむし酒を手放せなくなり、娘のために瓶を布で巻いて中身を隠したが、おイトさんは瓶を見るだけで吐いてしまい、父に内緒で上宿橋から身馴川へ投げ込んだ。翌日から高熱にうなされ、蚯蚓の煎じ薬も置き薬も医者も効かない。下町で評判の中山の行者を頼むと、蓋をしたまま流されたまむしは空気を得られず自然へ還れないから祟るのだと告げ、今後は瓶から出すか蓋を取って流すよう教えた。家族は誰も捨てたことを知らなかったので占いの的中に驚き、言われたとおりにすると熱は下がっていったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。