発破で飛んだ金のうろこの大蛇
どんな伝承か
鹿田の唐懸というところは、今の道路と違って大変狭く危険だった。明治一〇年、柏原の井上文内が頼まれて道路を直すことになり、近郷の一八の村から人夫を集めて夏の暑い盛りに突貫工事を続けたが、岩盤ばかりで思うように進まない。事故が起きてからも爆薬を使って岩盤を割った。ところがある日、一匹の大蛇が岩石とともに吹き飛んで宇陀川に落ちた。大蛇は金のうろこをしてぴかぴか光っていたそうで、向こう岸の草むらに姿を消した。それから二、三日して井上文内は急に熱病にかかって死に、作業人の多くも同じように苦しんだ。人々は大蛇のたたりだと恐れたが、やがて熱病も治り、工事は子の文治郎が引き継いでその年の秋に完成した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。