村はずれに響くドラム缶と犬の声
どんな伝承か
十数年前、高梨の部落総代を務めていた山田さんが田名部へ用足しに来て、帰り道についたのは夕方だった。名子平の辺りで親類のおかみさんに会うと、いま狐が走っていくのを見て怖かったと言うので、気をつけて行けと言って別れた。関根の村はずれまで来ると、すぐそばでドラム缶をがんがん叩く音がし、反対の樺山の方からは数匹の犬がいっせいに遠吠えする声がした。狐だと気づいた山田さんは、へその上をなでて下腹に力を入れ、心の中でお経を唱えながら家へ帰った。翌日関根で尋ねると、その時刻にドラム缶の音も犬の声も聞いた者はいなかった。おかみさんの前を走った狐が後をつけてきてからかったのだろうという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。