手招きする狐の祭り行列
どんな伝承か
上田屋のある爺さまが田名部へ用足しに来て、帰りが夜になった。最花を過ぎて坂を下ると、向こうからわっしょいわっしょいと掛け声をかけて祭りの行列がやってくる。こんな時刻にどこの祭りかと近づくと、行列の人がにこにこ笑って来い来いと手招きする。爺さまはその笑顔につられ、ふらふらと行列についていった。夜が明けて、田畑に出た集落の人が見ると、爺さまがひとり最花の坂下と下田屋の間を行ったり来たりしている。声をかけられてようやく我に返ったが、当人は祭りの列に加わって歩いている気でいたという。狐に化かされたのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。