開けてはならない箱と鶴ヶ池の主
どんな伝承か
昔、菅谷村の杢左衛門は伊勢参りの途中、奈良の猿沢の池のほとりで煙草をふかすうちに眠り込んだ。楽の音で目を覚ますと美しい女神が現れ、自分はこの池の主で、娘を鶴ヶ池の主に嫁がせる約束だから、この箱を鶴ヶ池に沈めてほしい、決して開けるなと言って消えた。村へ戻った杢左衛門は池の端で戒めを忘れて箱を開け、中から白い小蛇が出たのであわてて投げ込んだ。たちまち風雨が起こり、三年続けて作物が実らず村は寂れた。旅の僧が猿沢の池の主に詫びると言い残してから荒れは止んだという。鶴ヶ池は亀ヶ池とともに竜宮へ通じるとされ、明治十年ごろの大日照りには両池の水面を青竹で打って雨を乞い、満願の日に大雨が降ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
滝根町史 第3巻 (民俗編)
『滝根町史 第3巻(民俗編)』の口承文芸の節から伝説を抜き出したものである。福島県田村市滝根町(菅谷・神俣・広瀬)の大滝根山の田村麿と大滝丸、入水寺の観音、小野小町の伝え、鶴ヶ池物語、人柱茂左衛門、曽富登神社、六句の坊、片手観音、三本足の鳥、姥捨山などを収める。古い村誌の文語の引用と聞き書きの口語が混じる。