夢遊病のように林へ歩む良助
どんな伝承か
熱が出ると良助は庭に出たがり、ちょっとした公園ほどもある庭の林を夢遊病者のように歩き回った。下男の源兵は止められても見つからぬよう後をつけていた。ある日、ふらふら歩いていた良助は急にしゃんとした足取りになり、門を出て裏山へ向かった。まるで糸に引かれるように前だけを見て林へ分け入り、ある場所まで来ると立ち止まって何分も動かない。夕闇の迫るなか、源兵は太い樹の陰から寒気を覚えながら見守った。やがて良助は周囲を見回し、呆然とした顔で我に返ると、急ぎ足で家へ戻っていったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
恐怖の事実と悪霊を除く法-本間家の話(中岡俊哉・昭和30~40年代(推定))
本書は千葉県館山市の本間家を舞台にした実例的怪談である。明治時代に栄えた網元・本間家は、大正~昭和初期に長女ふでが神かくしで失踪したことを皮切りに、呪いに見舞われる。昭和19年から本格化した悪霊の祟りにより、家族は原因不明の奇病、憑依、夢遊病、発狂、自殺・他殺による死亡が連続する。行者の指摘により、床下に隠された血で描かれた100年以上前の自画像が呪いの根源であることが判明するも、お祓いは手遅れ。