新宿駅で腰が抜けたナルコレプシーの税務署員
どんな伝承か
著者の患者だった税務署員は、抗いがたい眠気のために、上司の前でも、必死に弁明する納税者の前でも居眠りをしてしまった。いくら説明しても分かってもらえず、四十歳を過ぎても役職に就けなかった。彼にはまた、新宿駅のホームで旧友と再会し懐かしさがこみ上げた途端、腰が抜けてホームにへたり込むという発作もあった。笑いや驚きで感情が動いた瞬間に力が抜ける情動脱力発作で、日中の眠気とともにナルコレプシーの症状である。この病の患者は夜の眠りも損なわれ、不安や恐怖に満ちた生々しい入眠時幻覚を伴うことが多いという。
原典より
また彼には、新宿駅のホームで旧友に再会して、懐かしいという感情がこみ上げた途端に、腰が抜けてクタクタとホームに座りこんでしまうという発作があったが、…—— 怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学)
『怪談の科学――幻覚の心理を探る』は、中村希明が精神医学の立場から著した怪談の解説書である。新聞記事の幽霊騒ぎや体験談、民話の化かされ話、「浅茅ヶ宿」やハムレット、『四谷怪談』などの古今東西の怪談を取り上げ、その多くを高速道路催眠現象、感覚遮断、飢えや寒冷、睡眠や薬物による幻覚として説明する。生理的幻覚から精神変調時の幻覚までを四章で分析し、第五章「怪談の論理」で恐怖と幻覚の仕組みと日本の幽霊の特色を論じる。