蚊帳の隅に座った姉の影
どんな伝承か
作家の陣出達朗が十三歳の夏に体験した話。七月半ばの夜中にふと目を覚ますと、蚊帳の隅に人が一人座ってうつむいていた。長い髪が顔に垂れ、どこか妖しい影だったが、誰だろうと思う程度ですぐまた眠ってしまった。それから三時間後に電報が届き、山中温泉へ養生に行っていた姉が亡くなったと知らされた。影を見た時刻と姉が息を引き取った時刻は同じだった。田舎の寝間は真っ暗だったのに人影が見えたことも不思議で、陣出は今も霊魂と幽霊を信じているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。