左入切り通しで手まりをつく少女
どんな伝承か
昭和三十四年七月末の夜半すぎ、昭島市宮沢町のYさん(二八)が八トン積みの大型ダンプを運転し、八王子から昭島市へ向かって走っていた。八王子駅から北へ約五キロ、滝山城址ハイキングコース入口になっている左入切り通しにさしかかった時、雨の降りしきる道路の真ん中で少女が悠々と手まりをついているのが見えた。警笛を鳴らしブレーキを踏んだが間に合わず轢いてしまった。だが車を降りて調べても轢死体は影も形もなく、舗装路には血の一滴もこぼれていなかった。戦前この切り通しの拡張工事で土砂崩れに埋まった娘がおり、長雨で白骨が出たためだと噂された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。