妻を迎えに来る若死にの夫
どんな伝承か
土淵村字栃内の渋川の某という男が、傷寒か何かの病で若くして死んだ。その葬式の晩から、男は毎晩のように妻のもとを訪れ、「とてもお前を残したのでは行く処へ行けぬから、一緒に連れに来た」と言ったという。ほかの者の目には何も見えなかったが、妻は毎夜一〇時ごろになると「ほれ、あそこへ来た」と口走り、苦しみ悶えた。そうして七日目に、妻はとうとう死んでしまったと伝わる。三〇年近くも前の出来事だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。