寂しげに鳴く狐は凶事の前触れ
どんな伝承か
キツネの鳴き方の違いによってさまざまな出来事が予知されるという伝承は各地にみられる。群馬県多野郡万場町の村々で著者が最近聞いたところでは、キツネがコンコンと淋しそうに鳴くと悪いことがある、といわれていたという。日本の憑きものがすべて有害と考えられているわけではなく、キツネやヘビが有益な予兆をもたらすという信仰も併存する。また、霊力をそなえた動物から託宣を聞くという行事が行われる村もあり、これは積極的に憑かれるようにするものである。キツネ憑きは必ずしも悪いこと、望ましくないことではなかったらしい、と著者は述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。