彼岸の餅を催促して墓へ走らせた先祖
どんな伝承か
約二十年前(一九五〇年ごろ)、高知県大方町(現黒潮町)K部落の三十歳代の婦人が、体の具合が悪く寺で拝んでもらった。御幣をつけた榊の小枝を持たせて住職が祈ると、婦人は御幣を荒々しく振り回し『彼岸さんにお餅が食べたい』と言うなり走り出した。追うと墓場へ走り、自分の家の先祖墓の周囲を三回まわって仰向けに倒れた。正気に返った婦人は、これまで彼岸に餅を供えたことがなく、先祖が催促に来ていたのだと語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。