吹雪の夜に現れた雪女
どんな伝承か
作並温泉地の入口、谷沢に臨んで、名マタギの岩松多利吉老人が住んでいた。その四十余年前の寒中、当時十六歳だった多利吉は父に従って大東岳の南麓へ狩に出かけた。獲物もないまま夕暮れとなり、高倉山の麓を過ぎる頃には烈しい吹雪となって眼も開けられないほどであった。少年は疲れ果てて父に背負われ、奥新川の下りにさしかかったとき、父が耳もとで、雪女が来た、静かにして決して声を出すなとささやいた。恐る恐る父の背中から覗くと、雪の広場の向こうから、まっ白い着物に蒼白い顔、背のほっそり高い女がしとしとと深雪を踏んでくる。父は黙って雪の中を駈けおり、部落の灯が見えるところでやっと生き返った心地がしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(宮城県史シリーズ・昭和中期(推定1960-1970年代))
宮城の民間信仰と禁忌(宮城県史民俗編)/禁忌を破る祟りと火玉/河童・狐狸の怪/年中行事と俗信/地域の幽霊・妖怪伝承