一晩踊らされた獅子舞と八景橋
どんな伝承か
桃生村と中津山村の境を流れる古川に架かる八景橋の一帯は、昔は荒れ野で狐狸の棲みかだった。ここには藤五郎と呼ばれる老狐がいて、通行人がしばしば化かされた。中津山村新田に勘作という獅子舞の師匠がおり、近在の祭に弟子を連れて招かれていた。ある日、太田袖沢小谷地の物持ちの家に呼ばれた帰り道、堂々たる門構えの屋敷にぜひにと招じ入れられ、一行は囃子に乗って夜通し舞い続けた。夜が明けると八景橋近くの谷地の中に立っており、土産はすべて失せていた。藤五郎狐の仕業だという。太田の者が夕方この橋のあたりを通ると、麹の箱を路傍に並べ、客を相手にするような身ぶりで独り言を言う知人がいたこともあった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。