名笛に聞き惚れた島の白狐
どんな伝承か
藩士鯰江六太夫は、藩主秘蔵の名笛鬼一管を自在に吹きこなしたが、事件に連座して鮎川沖の網地島長渡へ島流しとなり、笛を孤島の唯一の友とした。夕方になると十四、五歳の童子が来て笛の音に聞き惚れるようになったが、ある夜、実は千年の劫を経た狐で、御城下の狐捕り弥左衛門がこの島へ発ったのでもう命はないと明かし、恩返しにと源平合戦の様を座中に現してみせた。数日後、果たして弥左衛門が渡ってきて、八度めの罠で年経た白狐は最期をとげた。六太夫は童子に教えられた日に島の頂で秘曲を吹き、海上三十里を渡って届いた笛の音に国主が感嘆し、ほどなく召し還されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。