啼き真似で雉子を集めた九歳の孝子
どんな伝承か
宮城県栗原郡片子沢村に渡辺四方作という百姓があり、農業のひまに鳥の猟を内職としていた。その一子与吉(九歳)は、誰に教わるでもなく鳥獣の啼き声をまねるのが上手で、猫や犬の真似をすると本物かと人が怪しむほどで、近所でも評判であった。四方作は前年の暮に借りた二円が返せずにいたが、貸主から雉子十五羽で相殺しようと持ちかけられた。しかし雉子の猟は難しく、一日駆けまわっても五羽を得るのがやっとである。困った四方作が与吉を連れて山に登ると、与吉の啼き真似に誘われて数十羽の雉子が四方から飛び集まり、わずか六、七発で三十二羽を獲た。残りも買い取られ、その金は与吉の書籍代と蓄えに充てられたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。