戸籍は男で子を産んでいた四郷村の万次
どんな伝承か
大正三年、三重県度会郡四郷村の瀬古万次三十一歳は、八年前に妻すゑを迎えて同棲していたが、本年一月に死亡した。万次は戸籍上は男児であるにもかかわらず、以前に子を産んだことがあった。死亡後、戸籍上のことから裁判沙汰となり、ついに屍体を解剖した結果、女性であったことが判明し、十七日に婚姻無効の判決があった。万次があくまで男性を立て通したのは、幼少より両親のために男性として育て上げられたので、それに対する孝心から出たものであったという。
原典より
三重県度会郡四郷村瀬古万次(三一)は、八年前に妻すゑを迎へ、同棲中本年一月死亡せしが、是より先、同人は戸籍上男児なるに拘らず、子を産みたる事あり、…—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。