死後二十年に十人を産んだ怪戸籍
どんな伝承か
芝区役所の戸籍簿に奇妙な記載が見つかり、人々を驚かせた。同区宮本町十五番地の岩井サヨは明治二年生まれで、明治二十七年に死亡しているはずなのに、戸籍の上ではなお生存していることになっており、しかも死後二十年のあいだに十人の私生児を産んだと記されていた。近隣に彼女が住んだ形跡はない。戸籍吏は、死亡届が出ていない以上は生存とみなすほかないと述べた。子はいずれも他家の養子となっているが、引き取った側は相手方と会ったこともないという。出生を届け出た住所を調べても、そこにサヨが住んだ跡はなかった。死亡届の未提出を知る者が里子を彼女の子として届け、謝礼を得ていたのではないかと噂された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。