耳の後ろに生えた鬼のような二寸の角
どんな伝承か
大正四年、京都の宮川町五条に住む森田重次郎六十一歳は、前年の春頃から左の耳の後ろに疣のような小さな腫れ物ができ、その年の五月頃には長さ二寸、根回り三寸余りで先が尖り、ちょうど絵に描かれた鬼の角のような形になった。別段痛くも痒くもないが、寝る時に枕の邪魔になるので剃刀で削ごうとしたが石のように堅く歯が立たず、五月の末に京都府立病院で診断を受け、六月初めに角切りの手術を受けて見事に角を落とした。手術をした府立病院の外科部長河村博士は、これほど大きなものは世界にも余り例がなく、日本では無論第一の大角だと語ったという。
原典より
京都宮川町五条に住む森田重次郎(六一)は、昨年の春頃から左の耳の後ろに、疣のような小さな重物が出来、…—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。