雨を告げる安倍が城の錠
どんな伝承か
早池峰は御影石の山である。この山の小国に向いた側に安倍が城という岩があり、険しい崖の中ほどにあって、人などはとても行き得る処ではない。ここには今でも安倍貞任の母が住んでいると言い伝えられ、雨の降りそうな夕方などには岩屋の扉を鎖す音が聞こえるという。小国や附馬牛の人々は、安倍が城の錠の音がする、明日は雨だろうなどと言うのである。なお貞任の母は安倍頼時の妻にあたる人だとされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。