向島の夜道を照らす送り提灯火
どんな伝承か
送り提灯火は江戸の町でも見られたという。久保田藩(秋田)の藩士三浦儀右衛門が、向島の下屋敷へ帰る夜半のことである。月も星もない闇夜で足もとがおぼつかなかったところ、いつのまにか提灯の光が足もとを照らしてくれた。誰かがついてきているのかと振り返っても人影はなく、ただ明かりだけがともっていたという。儀右衛門はこれを牛島明神の加護と考え、提灯を一挺奉納した。奉納しなければ二度と送り提灯火には出会えないと言われる。人に害をなさず、むしろ助けてくれる怪火である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。