夕顔を取り殺した六条御息所の生霊
どんな伝承か
源氏物語の夕顔の巻に描かれた物の怪の話である。光源氏は五条あたりで見初めた夕顔と、互いに素性を明かさないまま深い仲になった。八月十五日の夜を夕顔の家で過ごしたのち、源氏は人目を避けて彼女を近くの荒れた院へ連れ出した。源融が造った六条河原院らしいとされる屋敷である。その夜、源氏の枕元に美しい女が座り、自分をさしおいてつまらぬ女を寵愛するとは恨めしいと言って夕顔を引き起こそうとした。灯が消え、人を呼んで戻ると夕顔は息をしておらず、やがて冷たくなった。六条の恋人の生霊の仕業とされる。
原典より
その夜、源氏が寝ていると、枕もとに美しい女が坐っていた。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。