墓の中から見つかった伊差川の娘
どんな伝承か
国頭郡羽地村の伊差川という小さな村に美しい娘がいた。ある夜、帰りが遅くなった娘は道に迷い、気づけば山道を歩いていたり磯辺に出たりしていたという。家の者は方々を捜したが行方が知れず、二週間近くが過ぎた。それでも諦めずに捜し歩き、ある墓地まで来ると、荒れた墓の中から人のうめき声がした。開けてみると、娘が半死半生で横たわっていた。この墓には小さな穴があるだけで人が出入りできる隙間はなく、暴かれた跡もない。形の見えぬ妖怪シチマジムンの仕業で、腰巻きを頭からかぶれば逃れられたのだと噂された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。