姿を消す蛙綿を着た娘
どんな伝承か
天明の頃、雫石の百姓家の娘が町からの戻り道で草むらにしゃがんだところを蛇に見られた。母親は蛇に見込まれたと嘆き、娘に死んだふりをさせて棺桶に入れた。若者に化けた蛇が嫁を求めて来たが、死んだと聞いて棺桶に巻きついて帰った。ところが桶の内の娘は本当に息をしていなかった。野辺送りののち、名主の下男が墓を掘り返して屍と契ると、娘は息を吹き返した。二人は村を出て逃げ、鬼の屋敷に泊まり、老婆から着ると姿の消える蛙綿を授かった。鬼の吐息で二人は東西へ飛ばされ、娘は遠野長者の屋敷の庭に落ちて下女となり、曲り屋の馬小屋を当てがわれた。夜ごと蛙綿を脱いで髪をすく美しい姿を長者の息子が見て恋い焦がれ、病に臥した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。