仏向寺の門前で飴を買う女
どんな伝承か
安永の頃、羽州天童の仏向寺は塔頭を十も数えるほどの寺で、山門の前に花屋があった。花屋は飴も売っており、晩になると若い女が一文銭を持って飴を買いに来た。六日目の晩、女は今晩かぎりですと悲しそうに言った。不審に思った主人が後をつけると、女は墓地に入り墓石の内へ姿を消した。翌日、赤児の泣き声を頼りに行くと、昨夜の墓石の下から声がする。住職とともに石を除けると、女の屍骸に抱かれた赤児がいた。女の夫は、女房は児を身ごもったまま死んだと語った。死んでから産んだのである。赤児は丈夫に育ち、天童では幽霊の赤児と呼んだものだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。