三部経を願って成仏した先妻の霊
どんな伝承か
岩国の寺田何某の妻は死後、毎夜幽霊となって家に現れた。落ち着いた性分の後妻が「この家に来るのを恨んでいるのか」と尋ねると、幽霊は「そうではない、どうか三部経を読誦してほしい」と告げた。寺で勤行させると、その後嬉しげな声で「今こそ仏果を得た」と虚空に響いたが、本当かどうかは定かでないという。
原典より
寺田何某妻、死して其幽霊、毎夜来りける故、後妻、落着たる者にて出給ふや、「わもじ此家に来るを恨み給ふや。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。