小瀬口の戦いの前に白山宮で見た蜂の合戦
どんな伝承か
慶応二年五月ごろ、小瀬口の戦いを前に岩国の兵はみな各地へ出張し、城のあたりはかえって寂しくなっていた。そのころ藩主の奥方の木下夫人は、わずかな供を連れて時々裏道から白山宮へ参詣していた。廻廊には大きな蜂の巣があり、夫人が通りかかると、山の方から大きな蜂の群れが飛来してその巣に攻めかかった。巣からは数百の蜂が湧くように出て大合戦となり、地に落ちて死んだ蜂は数え切れなかった。一行が足を止めて見ていると、ついに山蜂が敗れて去ったという。供の長和静生が後日語った話で、戦いは小瀬口の大勝利となった。
原典より
慶応二年、小瀬口戦争前方五月頃、岩国ニハ、兵士皆諸所二出張シ、御城辺ハ却テ物寂シクナリテ、有恪公御奥木下夫人後二順正へ、時々裏路通り、御供少人数ニテ白山宮へ参詣セラル。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。