若い燕に逃げられ狂って死んだ女主人
どんな伝承か
語り手は十七の春、名古屋の東海中学を退学させられて上京し、当初半年ほど神保町の素人下宿にいた。二階に六畳と四畳半があり、四畳半が自分の部屋で、六畳には明大の学生が二人いた。家の主人は五十くらいの未亡人で、金貸しの下請けをして大きな丸髷に結っていた。甥と称するチンチクリンの大学生が同居していたが、実は彼女の若い燕であった。やがてその男が虎の子を盗んで逃げ、文盲の主人に頼まれて語り手は復縁を乞う手紙を代筆したが男は帰らず、彼女はまもなく気が変になり、ジフテリヤで息を引き取った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。