湯船寺の本堂で閉ざされた戸
どんな伝承か
昭和三十年のことである。夫の祖父にあたるおじんつぁんは、何度か危篤状態に陥った。ぐったりとなるともうだめかと思われたが、注射をすると生き返り、今、湯船寺まで行って来た、と語った。本堂に人が集まって賑やかなので自分も入ろうとしたところ、本家の栄三郎おんつぁんに、いなじ、おめえまだここに来るのは早い、と本堂の戸をぴしゃりと閉められたのだという。その後も何度か湯船寺へ行ったが、そのたびに友人だった北目電気の平吉さんや近所の遠藤さんに、まだ来るのは早いと戸を閉められた。いずれもすでに亡くなっている人たちであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。