産の床で見た花咲く野と僧たち
どんな伝承か
昭和五年の秋頃の話である。一番下の女の子のお産のとき、多量の出血のため、分娩と同時に人事不省になった。そのとき、広いきれいな野原にいて、その向こうに大きな川のようなものがあり、向こう岸では墨染の衣を着た立派な若い僧たちが経を唱えていた。あたりには美しい花が一面に咲き、きれいな鳥がピイチクと鳴いて飛びかっている。なんとかして早くそこへ行きたいと思い、水車のような階段に乗るとずるりと落ちた。僧に頼もうとすると、いけない、と手を振られる。困っていると遠くから婆やが自分を呼ぶ声がかすかに聞こえ、ふと我に返った。枕元では皆が心配そうな顔をしていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。