銀座で倒れたコップと父の死の時刻
どんな伝承か
父が風邪を引いて寝ていた時、語り手は東京へ出張した。用事を済ませ夜行列車で帰ろうとしたが時間があったので、銀座でビールを飲んでいた。ところが何かのはずみでコップがひっくり返り、コップが割れてビールが流れ、店に迷惑をかけた。こんなことは初めてだったので、ふと風邪で寝ている父のことが頭に浮かび、何か異変がなければよいがと思った。夜行列車で帰り、自宅へは寄らず父の家へ行くと、昨晩急性肺炎で亡くなったという。父が亡くなった時刻は、語り手が銀座にいた時刻とほとんど同じであった。
原典より
私の叔母が先日(昭和五十七年・註/松谷)亡くなりまして、入院の初め頃は、死んだ者の顔が並んで崖の下に居て「来るな、来るな」と言っていて、自分は崖の上で必死につかまっていたと、夢の中の話をしていました。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。