雪の一本道で消えた角巻の女
どんな伝承か
入生田の高橋の伊藤亀吉の妻は早くに死んでしまった。死去したのは初秋のことである。ある冬の日、付近の某が所用あって橋本へやって来たが、帰りは夜の十時頃になった。雪道をとぼとぼ歩いていると、角巻姿の年増女に出会った。それは亀吉の妻そっくりで、すれすれに来たので言葉を交わそうと思ったが、考えてみれば死んだはずでもうこの世にいない。そう思うと急に恐ろしくなった。それでも女の行先を見ようと振り返ると、今すれちがったばかりの女の姿はもうなかった。雪道は一本道で歩道もないはずだと身ぶるいし、家に辿りついた時には物を言うこともできないほどだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。