船長の体を押さえた亡父
どんな伝承か
大正五、六年頃、三重県鳥羽市鳥羽での話。語り手の母の弟である大木鶴蔵は当時三十歳ほどで、外国航路の船長であった。寝ていると幾日も続けて亡父が現れ、布団の上からきつく体を押さえつける。「何か迷っていることでもあるのか」と聞くと、首を横に振って否定したという。間もなく叔父は、日本の汽船を英国へ売却引き渡すため、第一次世界大戦中の海へ出航していったが、台湾のキールンを出て間もなく行方不明になった。当時、日本海軍も出て調査したというが、そのまま帰らぬ人になってしまった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。