共同風呂から出る母子の幽霊
どんな伝承か
郡山市の館村には共同風呂があった。四辻から少し南へ入った、俗に「馬ひて川」と呼ばれる場所である。もとは田中の五人組が、薪と手間を省き火事を防ぐため、また風呂桶のない家のために始めたものが、村営へ広がったとも伝わる。初めは蒸し風呂で、のちに五右衛門風呂になった。ある夜更け、山屋敷の人が隣村の仕事から戻る途中に風呂場の前を通ると、白い着物の女が赤ん坊を抱いて小屋から出てきた。行き先を目で追うと、人家もない寺道の方へ消えたという。お産で死んだ母子の霊だろうと語られ、以来女たちは怖がって近寄らず、風呂番は終いの時刻を決めて湯を抜くようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。