共同風呂から出る母子の幽霊
どんな伝承か
館村には共同風呂があった。場所は四辻から少し南に入った、俗に「馬ひて川」と呼ぶところである。薪と手間の節約、火災の予防、それに風呂桶のない家があったことから五人組が始めたのが、村営に発展したのだという。もとは蒸し風呂で、のちに五右エ門風呂になった。ある夜更け、山屋敷の人が隣村の仕事の帰りに風呂場の通りにさしかかると、赤ん坊を抱いた白い着物の女が風呂小屋から出てきた。こんな夜更けに入る人もいるのかと思って行く先を見ていると、人家もない寺道の方へ消えた。お産で死んだ母子の幽霊だろうといわれ、以来、女衆は怖がって入らなくなり、風呂番は最終の時間を決めて湯の栓を抜くことにした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。