画博堂の娘に毎晩会いに来る父母
どんな伝承か
京橋の橋向こうにあった書画屋、画博堂の主人夫婦が、スペイン風邪の流行のさなかに相次いで世を去った。二人の遺骨を並べて祀った初七日の晩、集まった者たちが一つ所で話をしていた。残された五つばかりの女の子に、ある人が愛想のつもりで、父も母も急にいなくなって寂しかろうと声をかけた。すると娘は首を横に振り、父も母も毎晩来てくれるから少しも寂しくないと答えたという。画博堂はのちに主人の弟が引き継ぎ、戦争前までは元の場所にあり、この話を直に聞いた者も大勢いる。
原典より
私の叔母が先日(昭和五十七年・註/松谷)亡くなりまして、入院の初め頃は、死んだ者の顔が並んで崖の下に居て「来るな、来るな」と言っていて、自分は崖の上で必死につかまっていたと、夢の中の話をしていました。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。